当院がインプラントと矯正をやらない理由
歯科開業医の勉強方法を考えてみると
- 歯科医師・歯科衛生士向けに毎月発行される定期刊行物を読む
- 同じ志を持った歯科医師が毎月集まる勉強会に属す
- 毎年開催される学会や学術大会に参加する
- 企業や有名な先生が開催するセミナーや講習会に随時参加する
主にこれら4つになるかと思います。
院長紹介でも記載しましたが、様々な学術大会やセミナー、色々な勉強会に顔を出したりすると、そこで会う歯科医師や歯科衛生士と仲良くなり知り合いが増えていきます。
熱心な人は大体同じなので集まる顔ぶれも似てきたりします。
定期刊行物を発行される出版社の編集者さんや編集長さんは、常に歯科の動向を探っているのでどの会場にもおられたりしていて、そのような人とも顔見知りになったりします。
自分の臨床の方向を探っている30代の頃、ある編集長さんに「歯科は増えつつありますが、どのような歯科医院が生き残ると思いますか?」の問いかけに「患者さんの要求に対し引き出しが多い先生」と答えられました。
歯科の勉強自体が楽しかったので無我夢中で勉強しました。
当時流行り始め?のインプラントも学んだのですが方向性が大きく変わった40代の初めの頃、これから高齢化社会に突入していく中で訪問診療は欠かさなくなっていきますが、当院に通ってくださる患者さんは訪問していきたいと考えていますが、もしインプラントしていた場合訪問時では摘出することは自分には厳しい、そう感じてインプラントを行うことはしなくなりました。
磨けなくなったら歯は自然に抜けていくものですが、インプラントは違います。
患者さんに辛い思いをさせたくないというのがインプラントをやらなくなった理由で、インプラントで噛める幸せをその時に患者さんと共有するよりも、もっとその先の長い時間を患者さんと共にかかりつけ歯科医として接していきたいのが今の自分の考えです。
また矯正に関しても引き出しを増やす目的で一通り学びました。
歯周病は歯肉の治りなどの経過を追うのが楽しいのですが、矯正の経過を追うのが歯周病ほど興味を惹かなかったというのが矯正に踏み込まなかった理由だと思います。
また得意分野は短い時間でどんどん伸びていきますが、不得意分野はその伸びしろが少なく、何度も繰り返してやっと少し習得できるかといった時間的要素がもったいなく感じてしまったのと、矯正は「審美」と絡み、その美の追求は終わりが見えにくく、患者さんの要望に応えられるか考えさせられたことも要因です。
例えばEラインというのが矯正にはあるのですが、もしもそれを患者さんから求められてしまったり、右前歯の先端を1mm出して左前歯の歯頚部を1mm引っ込めながら0.5mm右にずらす、といった高度の要求をされてしまったら、自分の生半可な知識では対応できず、お互いが不幸になりかねないと感じたのも矯正をしなくなった理由です。
つまりは自分の勉強・技術不足から踏み込むのが怖いというのが本音ですね。。。
矯正はやはり専門医に診てもらうのが良いと思いますが、問題なのはインプラントです。
「自分はインプラント専門医だからインプラントしかしない」という医院があるようですが、すべての施術とその後の経過をメインテナンスを通じてお互いに歩んでいくのが歯科の在り方だと自分は考えています。
インプラントを埋めたらもう終わりと患者さんを突き放すような医院でインプラントを施術してしまうと、インプラント周囲炎などの時に困ることになります。
お金だけで選ぶのは後々トラブルの種になりかねないのでよく検討された方が良いかと思います。