「良い歯医者さん」とは何か、その基準を決めるのはとても難しいことだと思います。
人それぞれ感じ方が違うため、ちょっとした言動や態度に深く傷つく方もいれば、まったく気にしない方もいます。
そのため「患者さんからの紹介」が信頼できる情報であるとはいえ、必ずしも自分に合った歯医者さんであるとは限りません。
よく聞くのは「技術力が高い歯医者さん」という声ですが、それも一概には言えません。
たとえば、同じように治療した銀歯でも、10代で入れた場合と60代で入れた場合では、その後の持ち具合が大きく変わります。
若い方は歯や骨の状態が良いため長持ちしやすいですが、年齢を重ねると、同じ治療をしてもリスクが高くなってしまうのです。
また、状態の悪い歯を何とか残そうとすればするほど、治療後にトラブルが起きやすくなります。
逆に、悪い歯を抜いて、良い状態の歯だけを残すことで、治療後の問題は少なくなります。
このように考えていくと「結局、良い歯医者さんってどんな人なのか?」と、ますますわからなくなってしまいますよね。
私自身が思う「良い歯医者さん」とは、もちろん技術も大切ですが、それ以上に「患者さんの気持ちをしっかり汲み取れる人」だと思っています。
どんな状況でも感情的にならず、しっかり話を聞いてくれて、そのときどきに応じた的確なアドバイスをくれる歯医者さん。
私も、そんな存在でありたいと願い、日々努力を重ねています。
開業して数年が経ち、ようやく診療にも落ち着きが出てきた頃のことです。
ある患者さんの治療を行いました。その方は、ほとんどすべての歯にむし歯があり、時間をかけて丁寧に治療を行いました。
しかし、せっかくしっかりと治療を終えたにもかかわらず、すぐに治したそばから新たなむし歯ができてしまったのです。
「きちんと治したはずなのに、どうして...?」という気持ちになりました。
また、別の患者さんのケースもご紹介します。
その方は重度の歯周病で、歯ぐきが大きく腫れている状態でした。
私は丁寧に歯磨きの指導を行い、患者さんも一生懸命に努力してくださいました。
その結果、見違えるほど歯ぐきの状態は改善し、歯周病も無事に治療を終えることができました。
しかし、歯科治療は「終わってから」が本当に大切です。
その後も経過観察を続けていたところ、時間の経過とともに、少しずつですが再び歯ぐきの腫れが見られ、歯周病がじわじわと進行していったのです。
「歯ぐきの表面には汚れもなく、丁寧に磨けているのに、なぜ...?」という疑問が湧きました。
このような経験から、私は原因を探るために多くの文献を読み、講習会にも積極的に参加しました。
そして最終的にたどり着いたのが、「生活習慣」と「ストレス」の影響でした。
むし歯の患者さんには、砂糖入りの缶コーヒーを頻繁に飲むなど、食生活そのものに問題があるケースが多く見られました。
一方で、歯周病の患者さんには、生活習慣やストレスが深く関わっていることがわかり、私は最終的にこの2つの要因が大きな鍵であると結論づけました。
この考えにたどり着くまでには、1年以上の時間を要しました。
「お口の中だけを治しても、根本的な解決にはならない」
そう確信した私は、治療と並行して、
患者さま自身に生活習慣を見つめ直していただき、一緒に改善に取り組むこと
日常にふりかかるストレスへの対処法を、患者さまと共に探っていくこと
この2つを、当院の大切な目標として掲げることにしました。
もちろん、歯科医師として「しっかり噛めることの大切さ」は十分に理解しています。
しかし現在は、その「噛めること」ばかりが注目され、生活習慣やストレスの影響については、改善が難しいとされるがゆえに、あまり重視されていないように感じています。
とはいえ、これらは非常に難しい問題であり、すぐに変えられるものではありません。
それでも、生活習慣をほんの少し見直すだけで、病気を予防できる可能性は大いにあります。
ご来院くださる患者さまには、こうした考えを心のどこかに留めていただき、少しずつでもご自身の「健康」に近づいていってほしい――。
それが私たち細川歯科医院の心からの願いです。